この相場環境を疾病対策に!
日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博
2015年も、あっという間に半分が終わろうとしています。月日の流れるのは早いもので、本誌の出る頃には、数年先の事と思っていた京都の第7回国際新興・再興豚病学会(ISERPD2015 6月21~24日 於 京都国際会館)の真最中か、もしかしたら終わっているかもしれません。この学会は4年に一度、世界の豚の病気の専門家が一堂に集まって、最先端の情報を交換し合う場です。学会ではもちろんPEDに関する話題もたくさん発表されますが、養豚の世界に存在する実にたくさんの疾病についても同様に取り上げられます。一方、国内でも5月22日に開催された日本豚病研究会においても、「離乳舎で多発する疾病について」と題して、PED以外の疾病にも目を向けようと特集が組まれました。本コーナーでおなじみの石関紗代子先生や動物衛生研究所の芝原友幸先生にもご講演をいただきました。もちろんPEDは大問題ですが、PED以外の多くの疾病も、PED流行の以前からずっと継続的に発生しており、これらの疾病による経済的被害も看過できない状況です。PRRSにPCV2、レンサ球菌症に浮腫病......挙げればきりがありませんが、少しずつこれらの疾病対策にも注意を戻していきたいと思います。
このような常在性疾病に対する対策を考えるうえでは、飼育環境の改善が重要であるという話は、もう皆さん耳にタコができていると思いますが、飼育環境の改善は、畜舎の構造に大きな制限を受けます。「この豚舎の換気をもっと上げたい」と思っても、入排気の設備が不十分でできなかったり、解放豚舎のスキマ風対策が難しくて途方にくれたり、現場レベルでの悩みは設備の問題に行き着くことは少なくありません。昨年度から今年度にかけての豚価上昇は、このような悩みを解決する絶好のタイミングではないでしょうか。豚舎設備の修繕や改築、新設等々、20年来の高豚価を設備の充実に生かしてはどうでしょうか。条件が整えば一括償却もできるとお聞きしています。すでに行動を起こしていらっしゃる生産者の方からのお話もお聞きしていますが、資材の価格も上昇しつつあり、労働力が不足していて計画通りに工事が進まないという声もお聞きしていますので、早めに計画を立ててはどうでしょうか。
「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2015年06月号掲載