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高豚価と国産のプライド

日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博

花粉症の季節がやってまいりました。3月に入って急に鼻炎症状が激しくなり往生しております。先月も鼻炎の話を書きましたが、花粉症のお話は、このコーナーで毎年書かせていただいており、もはや恒例です。

先日、西日本の某県で養豚関係者対象のセミナーがあり、お話をさせていただきました。「PEDの問題もまだ継続して予断を許さないけれど、毎日の養豚生産成績の向上に向けた努力も並行してやっていきましょう。」という主旨であったのですが、その話題の中で、昨年、今年の豚価について話題にした時の事でした。私は「昨年、今年の豚価は、いわば神風のようなもので、再び豚価が低迷した時に備えて、生産コストの削減をしていく必要があります。」と言ったところ、質疑応答の時にフロアから生産者の方が、「昨年今年の豚価は、様々な要因が絡んでいると思われるが、ようやく我々日本の豚肉が、その安全性と品質で正当な評価を得られて来た、という考え方ができるのではないか?」と切り返されてしまいました。さらに「もしこれが正当な評価だとするなら、この評価を守るために、海外の豚肉よりも、より安全性を高め、品質の高い豚肉つくりを進めていく必要があるのではないか。」ともおっしゃられました。私はこの方のお話を聞いて、非常にうれしい気持になると同時に、頭っから悲観的な観点でのお話をしてしまった自分を恥ずかしく感じました。生産コスト低減への努力は今後も続けるべきであることは言うまでもありませんが、この生産者の方は、自分たちの作っている豚肉にプライドを持っておられる、とストレートに感じられたからです。確かにここ数年、マスコミの報道等を見ても、日本の畜産生産物の品質に対する評価が非常に高まっているというニュースをしばしば見かけます。ご自分の豚肉の品質を武器に海外輸出に挑戦されている生産者も数名知っております。農場での生産性の向上を、来るべき低豚価に備えて「やらなければならない事」として取り組むのと、「おれたちはこんなに安全でおいしい豚肉を作っているんだ」という自負を持って取り組むのとでは、同じ作業でも出てくる結果は大きく違ってくるはずです。

PEDやTPPなどなど、逆風を受けているうちに、自分の背中が一番縮こまっていたようです。養豚家の皆さんと、プライドを持って、胸を張って、日本のおいしい豚肉を作って行こう、と勇気をもらったような気がしました。ありがとうございました。

「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2015年03月号掲載

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