この冬、呼吸器病に要注意!
日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博
今年の冬は、当初暖冬だという予報だったはずですが、いきなり寒波がやってきて、例年よりもずっと寒く感じました(歳のせいもあるかもしれませんが...)。シーズン初めから急激な寒波が断続的に訪れたために、養豚場では呼吸器病に対して過酷な条件だったと思います。まだまだPEDへの対応に意識が取られがちですが、皆様の農場では呼吸器病の状況はいかがでしょうか。我々のラボには、今年も胸膜肺炎や豚インフルエンザ等々、呼吸器症状の検体が通年通りに届いております。呼吸器病対策も余念なく取り組む必要があります。今シーズンの冬、呼吸器病をケアしなければならない理由が少なくとも2つ考えられます。
まずは理由その1ですが、ずーと寒さが続く場合よりも、今年のように寒波が断続的に来た方が、感じる寒冷ストレスは強くなります。加えて管理者の環境調節も、寒暖の差が大きい方がずっと難しくなします。次に理由その2、PEDの感染を受けた豚では、急性期には小腸の絨毛が脱落してしまい、腸内細菌叢も一旦乱れます。腸管は身体中で最大の免疫器官であるという言葉がありますが、PED感染を受けた豚は、下痢症状が回復した後でも免疫力に悪影響が出ることが容易に想像できます。それは腸管内の免疫だけでなく呼吸器も含め全身の免疫に対して起きているはずです。これらの理由から、今年の冬は呼吸器病にも充分な対策を取る必要があるのです。特に今後3月から4月にかけては、例年寒暖差がさらに大きくなる事が予想されます。呼吸器病対策の本番はこれからです。豚舎内温度差の縮小、最低換気量の確保、隙間風の予防、抗菌性物質の適時適切な使用等々、これまでも様々なセミナーや本誌の中でも繰り返し紹介されてきた方法を再度チェックしておくことが重要です。
加えて、上述したようにPEDの浸潤農場では、腸管内の免疫システムを活性化することで、包括的な健康状態を向上させる事で呼吸器病に対する抗病性も高める事もまた重要であると考えます。私事で恐縮ですが、自分自身の持病の慢性副鼻腔炎対策として鍼治療を開始しました。鼻のツボに鍼を打つのかと恐る恐る通ってみると、首から肩にかけて集中的に鍼を打って、その部分の筋肉のコリをほぐして血流(あるいはリンパの流れ)を改善し、鼻腔内の炎症物質を患部から排除する作戦のようです。同時に鍼灸師からは、一日に2リットル以上の水を飲む事を命じられました。水は体内の炎症物質などの不要物を体外に排出するための溶媒という考えのようです。鍼治療のおかげで、西洋医学で数年間効果の出なかった症状に、少しずつ改善が見られつつあります。症状に対する対策ではなく、身体全体の健康度を向上させることで、個々の不具合を改善していく考え方は、今後の農場内の疾病の複雑な絡み合いをほぐしていくのに、重要なヒントになるのではないかと感じています。
「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2015年02月号掲載