技術情報Technical Info

PED以外にも効いている消毒

日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博

豚流行性下痢(PED)の新規発生農場の秋以降の増加は、原稿執筆時には、まだなんともいえない状況ですが、本誌が届く頃であっても増加していないことを祈るばかりです。また、発生農場における症状の持続期間の長さ、あるいは再発生(いわゆるぶり返し)などの状況を見ると、今回のPEDは一筋縄ではいかないものだと感じています。

また、下痢が長引くのでPEDの症状がまだ治まっていないのかと思って検査してみると、PEDではなく大腸菌による下痢であったりするケースもいくつか経験しています。PEDの影響を受けた後に、農場内の母豚、子豚の腸内細菌叢が乱れているのではないかと考えられます。PED症状のピーク時には、使用しても効果の発揮できなかった生菌剤やプレバイオティクス、有機酸製剤等々が、これらの腸内細菌叢の正常化に一役買ってくれるのではないかと期待して投与をお勧めしています。

さらに、この時期増加してくる呼吸器病についての対策も、PEDの有無に関わらず粛々と進める必要があります。PEDの予想以上の影響に驚かされながらも、通常の疾病がなくなったわけではないので、そこは気を引き締める必要があります。PED発生ピーク時に徹底的に行った消毒については、その後も呼吸器病やその他の下痢の発生が少なくなったと言う声を多く聞きます。過去、オーエスキー病の感染拡大時や胸膜肺炎1型菌の流行時などにも同じように消毒の効果について、期待していた疾病以外にも良い効果が得られたという経験をされている農場も多いはずです。消毒についてはそのままの勢いで、継続されることを強くお勧めします。

PEDの消毒の話に戻りますが、1990年代にPEDが流行した際には、PCRなどの遺伝子診断技術がまだ普及しておらず、ウイルスが農場内のどこにどの程度居残っているかについては知る術がありませんでしたが、今回の流行では、多くの農場でPCRによるウイルスの検査が頻繁に行われているようです。その中で、PEDウイルスが糞尿ピットの中でかなり長く存在していると言う事が分かり始めています。高床ケージの上にいる豚を消毒していても、スノコやメッシュの下のピットにウイルスが残っているとすれば、ハエなどの昆虫がウイルスを運ぶ可能性も考えられます。消毒の際には糞尿ピットやスクレッパーなど、豚が居る場所の下の部分まで充分に消毒をする事が重要です。

「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2014年10月号掲載

一覧へ