PEDに隠れた昨夏の猛暑の影響
日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博
豚流行性下痢(PED)の新規発生農場も6月第4週時点で3農場となっており、まだ予断は許せないとは思いますが、そろそろ、制限していた農場巡回を再開し始めております。久しぶりにお邪魔する農場では、大きな変化が無く順調に推移している所、PED以外の疾病で被害を受けてしまったところ、様々ですが、やはり現場の空気は良いものです。
季節的には、本誌が発行されることには梅雨が明けているかどうかギリギリかと思いますが、今年の梅雨は突然の豪雨(雹を含む)にたびたび襲われました。そのこと自身は大変でしたが、暑さはまだ本格的ではなく、母豚にとってはありがたい気候です。
先日、今年度の全国と畜頭数の統計を見ていましたが、5月の豚のと畜頭数は1,315千頭で前年同月比92.5%、4-5月累計でも前年比94.3%と非常に低水準でした。PEDに気をとられてすっかり忘れていましたが、昨年夏の暑さの影響を受け、冬場の分娩頭数が大きく減少しており、この春の豚価については、米国のPEDによる輸出減が大きな要因になっていると思われますが、昨夏の暑さによる繁殖成績の悪化も大きいことを再認識しました。
さて、今年の夏はどうなるのでしょうか。エルニーニョがどうのこうので冷夏という予想もあるのでしょうが、これに過度の期待をする事は非常に危険です。特に今回PEDの感染を受けてしまった農場では、母豚が受けたストレスは想像以上のようです。いつもの夏よりもさらに母豚の対応力は下がっていると考えて、先手を打っておく必要があります。母豚のボディコンディションを整え(過肥を避け)、換気量を上げるためのファンの整備、体感温度を下げるためのミスト噴霧装置、寒冷紗の設置、母豚の体力を補うための夏場専用の混合飼料の給与等々、準備を急ぐ必要があります。また、夏場の雄豚の精液性状の悪化を補うための人工授精用の希釈精液の購入についても、PEDの影響を受け、タイトになってくると予想されます。
ところで、今回のPEDの流行で、多くの種豚場が感染を受けておりますが、感染を受けてしまった種豚場で、症状が見られなくなった所から順次、PED陽性の農場への種豚出荷が始まっていると聞いています。さらにこれらの種豚場から、PED陰性農場への出荷をいつ再開できるか、当社の関係農場も含めてですが、感染拡大のリスクが無いことをどのように証明していくか、非常に難しい問題に直面しています。哺乳豚の死亡はもちろん大問題ですが、その後もいくつもの乗り越えるべき課題が山積しています。
「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2014年07月号掲載