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PEDはあらゆる可能性否定せず

日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博

昨年11月以降、日本で豚流行性下痢(PED)の発生が報告され始めて半年が経過しようとしていますが、いまだ予断を許さない状況が継続しています。感染が日本全国に拡大する中で、私自身、経験したことの無い事例が立て続けに発生しており、感染拡大の主要な原因に近づけない歯がゆい思いが続いています。あらゆる可能性を否定せずに、コツコツと消去法を積み重ねていく姿勢で臨みたいと考えています。

PEDも含めて、養豚場内の疾病に関するご相談は、農場へのご訪問が難しいため、ほぼ全て電話によるやり取りとなっており、このことも歯がゆさの一因となっています。養豚場内で疾病の状態を確認する場合は、視覚、触覚だけでなく、聴覚、嗅覚、時には味覚などを駆使して判断していた事に改めて気付かされます。おそらくはこれらの感覚が総合された結果だと思われますが、農場に入ったとたんに「ん?何か変だぞ!」と感じる事も多く、これはあたかも五感を越えた第六感と思いたくなるような感覚です。第六感ではなく、嗅覚に関してですが、PED発生豚舎内(特に分娩舎)では、独特のすっぱい臭いが充満するため、診断の手がかりのひとつになります。

このように現在、現場感覚の手がかりの無い状態で、電話での疾病のご相談を受けている訳ですが、いかに判断の決め手となる事項を要領良くお客様から引き出すかについて、改めて考えさせられている毎日です。しかしその不自由から、それぞれの疾病の特徴について、より的確なポイントを整理しておく必要があります。

一言で下痢といっても、水様性か白痢か軟便か、どのステージで起きているのか、嘔吐は伴うのか、症状は発症後どれくらい続くのか、事故率は、周辺の農場の状況は、等々まだまだたくさん聞きたい事が出てきます。あらゆる可能性を否定せずに、正確な診断をするために、いつもより長い電話での確認にお付き合いをお願いします。

「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2014年05月号掲載

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