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PEDの感染源とワクチン配分

日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博

今月もまた豚流行性下痢(PED)の話題について取り上げたいと思います。この原稿を書いている時点で、沖縄、茨城、鹿児島、宮崎、熊本、愛知、高知、青森の8県で発生が報告されております。鹿児島、宮崎での感染拡大速度が下がっているため、新規発生件数は減少傾向ですが、新たな地域での発生のリスクはまだ継続中で、私も含め、全国の養豚関係者の皆様は不安な日々を送られているものと思います。この不安がどこから来るかといえば、現在の発生地域から大きく離れた地域で新たな発生が起きた時の感染源が何であるかがわからないからだと思います。PED感染予防には、「バイオセキュリティの強化」が重要であることは疑う余地はありませんし、どの農場もできる限りの消毒を実施していることと思います。しかし、そのセキュリティの網を潜って、しかもはるか遠くの地域でポツリと発生が報告されると、言い知れぬ怖さが襲ってきます。

この怖さを克服するためには、遠隔地域にPEDが飛び火する感染源を明らかにするしかないと思いますが、今のところこれに迫る情報はまだ得られていません。何とかこの謎に迫れないものでしょうか。その地域で始めて感染した農場の皆様にご協力を頂き、発症直前までに豚に給与した物をリストアップし、これを比較検討する事は出来ないものでしょうか。発生農場の皆様がその地域でつらい思いをされている事も理解しているつもりですが、国内の多くの仲間を守る手段として、この疫学調査は非常に価値のある調査となると思います。憶測による風評被害が起きる前に、科学的で詳細な疫学調査が望まれる局面だと思います。

さらにもうひとつ、ワクチンのデリバリーの問題ですが、現時点では日生研さんと化血研さんが必死にワクチン増産に取り組んで頂いているとお聞きしています。新しいロットの供給の予定も数ヵ月後まで判っているようです。このワクチンは症状緩和効果を期待するワクチンであると先月も書きましたが、接種豚が感染した場合、少しでも症状を軽減できれば、排出されるウイルス量も減少するものと思われます。ですので、できるだけ多くの農場がPEDワクチンを接種しておくことは、地域でのPEDの感染拡大に役立つものと思われます。ワクチンが不足している程の状況の時に、これ以上ワクチンを多くの豚に接種できるわけないだろう、とお考えかもしれません。しかし農場単位でのワクチンの入手の場合、数ヶ月単位の接種頭数分を大きい農場が確保した場合、そのワクチンは接種されずに数ヶ月間冷蔵庫の中に保存される事になります。自農場の防衛は自助努力として当然ですから、その事を否定するつもりは毛頭ありません。そうではなく、今後のワクチン供給予定がある程度読めているのなら、そのワクチンが出来るだけ農場の冷蔵庫で眠る事無く、次々に、できるだけ多くの豚に接種されるように供給する方法は無いものでしょうか。答えの無い話ばかりで申し訳ありません。何とか答えを探すべく考え続けています。

「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2014年03月号掲載

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