拡大続くPEDに引き続き注目!
日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
さて昨年末から継続している南九州での豚流行性下痢(PED)についてですが、原稿を書いている現時点でもまだ発生農場の拡大傾向は止まっていないようです。1996年の発生時に追いつくような規模になってしまうのか、今のところなんとも言えませんが、状況を注視していく必要があります。特に鹿児島県、宮崎県からは、ほぼ毎日のように新たな発生の情報がメールを通じて入手できるため、96年の時と比較して、私自身は冷静な対応を取れております。発生農場ごとの事故頭数や発症頭数などの情報も提供されており、それを見ると中には非常に軽度な発生例も含まれているようです。疾病発生情報がある程度オープンになっている事で、今までは見過ごされていた発生についても家畜保健衛生所に相談するようになり、その結果、軽度な症例についても報告、把握されているのではないかと考えています。そのこと自身は非常に良いことだと思います。ただ過去の事例と比較するときに、発生農場数が以前より多めにカウントされる可能性がある事を念頭においておく必要がありそうです。
農場ごとにバイオセキュリティ強化やワクチン接種、2次感染の防止のための抗菌性物質の投与などの対応策がとられていると思われますが、地域全体として抗体保有状況があるレベルに達して落ち着くのにはもう少し時間がかかるかもしれません。現地で対応に当たっておられる獣医師の先生方、本当にご苦労様です。
このPEDは、米国でもまだ感染拡大中と聞いております。先月号でも書きましたが、世界各地で発生し始める時の、あるいは日本の各地に広がる際(沖縄、茨城、鹿児島、宮崎)の感染源が何なのかを、何とかはっきりとさせる方法はないものでしょうか。遺伝子解析情報についてもオープンになっており、これらのウイルス株同士の相同性が非常に高いことはわかりましたが、依然として何に乗って、どこから来たのかが判りません。判らないことを文章にしてしまい申し訳ありません。風評被害に加担することは避けなければなりませんが、原因調査も、再発防止には非常に重要な事柄です。冷静かつ確実な情報の収集と解析が待たれるところです。
「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2014年01月号掲載