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ダンス病の病原ウイルス発見!

日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博

今年もついに12月が来てしまいました。毎年12月号の原稿を書く度に、この一年を振り返るのが恒例となっており、過去の原稿を読み返してみました。昨年の今頃は、暮れになっても豚価が上がらず、どうなってしまうのだろうという不安を抱えた年の暮れでした。春ごろから差額関税制度の厳格運用が進み、豚肉輸入量の減少に伴って、国産豚肉の需要が回復して豚価が上昇してきました。多くの生産者の方が一息ついている状況ではないでしょうか。

一方、疾病の発生状況では、サーコウイルス2型によるPMWSについては、広くワクチン接種が継続されており、全国的に問題となる疾病については落ち着きを取り戻しているように感じます。しかし、ここに来てじわりと離乳後事故が増加傾向にある農場も多く、農場毎に疾病対策を再度引き締める必要を感じています。

さらに、米国で広がり続けている豚流行性下痢(PED)が日本でも報告され始め、感染症のグローバル化は憂慮すべき問題です。そもそも国を越えてウイルスが広がっていく場合、生きた豚を介して持ち込まれるリスクが最も大きいことは当然ですが、中国から米国への生豚の移動がありえないとすれば、その他の可能性を徹底的に調査する必要があります。

また米国内での農場間の広がりも、われわれにとっては意外な展開でした。米国のバイオセキュリティにも大きな穴が見えつつあります。と場への往復の車輌消毒はさらに徹底して行うべきでしょう。また日本の農場でよく見かけるのは、農場の中、特に分娩舎に猫が入り込んでいるケースです。犬を飼っている農場もありますが、猫の場合ほとんどが、放し飼いで自由行動をしているため、農場密集地域では、農場間を行き来しているケースも多いものと思われます。これは、生豚の行き来にも増して、最も危険な行為です。猫はどこからともなく農場に入ってくるから防げないとおっしゃる方もいますが、猫が入れる場所を徹底的に見つけて塞ぐことは、豚舎外回りの不具合を見つける良い機会にもなりますのでぜひ実行をお勧めします。

この原稿を書いている最中にも、PEDだけでなく伝染性胃腸炎(TGE)発生の情報も聞こえてきております。年末年始に向け、農場単位でのバイオセキュリティを再度引き締め、良い新年をお迎えください。

「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2013年12月号掲載

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