技術情報Technical Info

PRRS対策に日本の獣医療結集を!

日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博

ところで皆さん、「ダンス病」をご存知でしょうか。分娩直後の哺乳豚が、一腹まとめて、激しく震えて、母乳が飲めずに衰弱して死んでしまう病気です。初産を中心に複数腹まとめて発症したと思ったら、その後ぱったりと発生しなくなるなど、つかみどころのない病気です。なお、母豚にはまったく症状は観察されません。

11月に入り、北国ではすでに雪の便りも聞かれます。しかし、お伺いしている農場の中には冬場の対策の間に合っていない農場も見られます。養豚場の季節対策は、夏の後、すぐに真冬の備えが無いと十分な対応が出来ません。急ぎましょう。 話題は変わりますが、10月23日に、東京都京橋のMeijiSeikaファルマ(株)本社の講堂をお借りして、日本豚病研究会、日本養豚開業獣医師協会、日本豚病臨床研究会が共催した合同集会が開催されました。この3団体合同集会は、2009年秋につくばで開催されたアジア養豚獣医学会(APVS)をきっかけに、豚病に関連する3つの団体が協力して毎年1回開催してきた研究集会で、今年で4回目の開催となります。今年も200名を越える皆様にお集まりいただきました。

今年の統一テーマは、ここ数年連続でPRRSが取り上げられましたが、豚病を取り巻く産官学の第一人者の先生方がそれぞれの立場からPRRSをめぐる最新状況をご紹介され、それに対して参加者から活発な議論が繰り広げられました。この3団体はそれぞれに、日頃から豚病の克服に関して活動しておりますが、3団体が一堂に会して議論を行う事が以下に重要であるかを改めて強く感じた日でした。

PRRSウイルスがオランダで始めて発見されたのが1991年、日本での初めての報告が1993年ですが、その後20年以上の間、世界中の研究者がPRRSの克服に心血を注いできました。にもかかわらず、PRRSは世界中で、養豚生産の最も大きな障害のひとつであり続けています。世界の養豚業界と互角に勝負を強いられる日本の養豚界をPRRSの影響から守るためにも、日本の養豚獣医師は、それぞれの立場を超えて協力しなければなりません。その象徴的な取り組みとして、この3団体合同集会が今後とも活発に開催されることを祈っております。この集会に様々な立場からご協力いただいた皆様に心から御礼を申し上げます。そして2015年6月には、京都で第7回国際新興・再興豚病学会(ISERPD 2015 in KYOTO)が開催されます。その時日本のPRRSはどこまで克服されているのでしょうか。楽しみです。

「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2013年11月号掲載

一覧へ