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母豚の暑熱ストレスが子豚の浮腫病を?!

日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博

相変わらず気候の変動について予想がつかない状況が続いており、豚舎の環境調整に苦慮されている方々も多いかと思います。毎年夏の終わりから秋の初めには、母豚の暑さ疲れが原因となって様々な不調が引き起こされてくるわけですが、今年の秋もそのような兆候を感じます。離乳子豚の浮腫病あるいは離乳後下痢のご相談が、地域に関係なく多いようです。離乳後の大腸菌症に関しては、もちろん離乳豚が発症するわけですが、その根底には、母豚の暑熱によるストレス→体調不良→腸内細菌のバランスの崩れ→毒素原性大腸菌の増殖→哺乳豚への垂直感染→離乳後の発症といった連鎖反応が起きているものと想像できます。

浮腫病が発生すると、毒素の放出を伴わない感受性抗菌剤の投与、無機亜鉛の添加、生菌剤、有機酸の飼料添加などの対策がとられるのが常道だと思います。しかし少し立ち止まって、母豚の状態を確認してみてください。飼料摂取状況は?、発熱は?、産褥熱は無いか?、ボディコンディションは?等々のチェックで引っかかってくる母豚はいないでしょうか。夏場の飲水量不足が今になって祟っているというケースも充分にありえます。また、ちょっとびっくりしているのですが、夏真っ盛りの頃には、母豚が暑さで死んでいるという話は、今年はそう多く聞かなかったと思っていたのですが、秋になって聞くと、「いや、実は死んでいたんだよ。」などという話も少なからず聞いています。農場内の状況の聞き取りの際には、こちらから聞いていないことは、農場の方が話さなかったからといって、起きていないとは限らないものだ、と改めて反省しているところです。

それはともかく、上記のような母豚の不調を再チェックして問題がある場合には、発症している離乳豚への対処と同時に、母豚群にも適正な処置を行う必要があります。母豚に対する抗生剤の投与、熱発時には解熱剤の投与などの対症療法も重要です。また母豚への生菌剤の投与や有機酸の添加なども効果的です。本来、自然と食下量が上がってくる時期に餌を食わない母豚が目立つ場合にも、母豚の観察が欠かせません。母豚の健康の再チェックをお願いします。

「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2013年10月号掲載

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