検査は適切な材料を得てすべて実施!
日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博
突風と集中豪雨で夏が締めくくられようとしていますが、再び気温差へのケアをしなければならない季節です。離乳舎から肉豚舎にかけての事故について、対策の再確認が必要な農場は多いはずです。
我々のラボでも、毎年9月以降、特にお彼岸を超えると、呼吸器病を中心に事故増加のご相談が増える傾向があります。個々の事例について検査を実施しながら、その原因について解きほぐしていくわけですが、PRRS、胸膜肺炎、マイコプラズマ肺炎などの"定番"の病原体はもちろん、その他の病原体についても幅広に調査する必要性を強く感じています。たとえばサーコウイルス2型については、もうすでにワクチン接種により過去の病気になったような気持ちになっていますが、死亡豚の肺からPCV2の遺伝子が検出されるケースもまだ散見されます。ワクチネーションの接種時期、接種量、接種のやり方(体外に漏れてないか、打ち逃しは無いか)について、本当に適切に行われているかをきっちりと確認しなければなりません。また、インフルエンザウイルスも検査を行っていないと、見逃してしまう危険性が大きい病原体のひとつです。最近の様々な報告を聞いていると、予想外にインフルエンザウイルスが関与している場合が多いかもしれません。
PRDC(豚呼吸器病症候群)という言葉が豚の世界で使われるようになって、もうずいぶん経ちますが、「様々な病原体が複雑に絡み合ううちに、個別の病原体の特徴的症状とは違った様相を呈する。」という側面を、もう一度噛み締める必要を痛感しています。コスト削減を進めなければならない生産現場で、検査費用についても無尽蔵に実施する訳にいかず、極力絞るわけですが、絞りすぎるとPRDCの一部しか見えない危険性もあります。この兼ね合いが難しいところです。ポイントは、できるだけ適切な検体を吟味して、選んだ検体については、考えられるすべての検査項目を行う事です。
そして、検査機関の我々は、そのニーズにこたえられるような、検査方法をできるだけ幅広く揃えておく必要があります。豚病の診断法の進歩のために、もっともっと努力しければなりません。
「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2013年09月号掲載