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気温、湿度不足に要注意の季節

日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博

日中の気温はだいぶ上昇して、地域によっては夏日、真夏日も記録しているようですが、朝晩の冷え込みはまだまだ残っており、例年より気温の日格差が大きい日が多いようです。養豚場にとっては舎内環境の調節に頭を悩ます日々が続きます。特に夕方3時から5時くらいを境に、急に冷え込んでくる事も多く、夕方作業を終える時点での換気の取り方を間違えると、呼吸器病発症のきっかけとなって事故が増えるというパターンが散見されるようです。スポット天気予報などを上手に使いながら、夜間の環境調整を遅い時間に遅らせることも必要になるかと思います。また、これから入梅までの季節は意外と湿度が低く、舎内が乾燥します。おまけに気温上昇につれて舎内の換気量が増加してきますので、中途半端な散水や細霧では中々湿度を上昇させられません。まだ気温差が大きいですから豚を濡らすのはご法度ですが、場所や方法を選んで思い切った散水が必要です。豚舎の中でクシャミが増えてきたら、湿度不足を疑って調べてみてください。最近では温度、湿度がデジタルで、大きな数字で表示される温湿度計が1,000円前後で購入できます。たくさん買い込んで、豚舎のいたるところに設置すれば、温度、湿度の意外な盲点も見えるかもしれません。

豚舎の乾燥と関連しているのか、この春以降、分娩舎でのクシャミや、ごく早い時期の肺炎の発症に出くわします。我々のスタッフが、分娩舎の哺乳豚が呼吸器症状を示したので解剖したところ、肺にしっかりと出血や硬結等の典型的な胸膜肺炎病変が見られ、胸膜肺炎菌が分離されたケースもあります。このようなケースのすべてが気温や湿度の問題とは断言できませんが、大きな要因になっている事は事実であろうと思います。実際に人間の私でさえ、暑さ寒さを衣服で調節できるのに、九州だ、東北だとランダムに出張を繰り返すうちに、体調を崩しやすくなります。特に今年は寒暖の差のストレスを大きく感じます。(年齢の影響も大きいかもしれませんが...)

養豚家のお客様に対して、「夏場対策」、「冬場対策」というテーマでお話をさせて頂くことも多いのですが、今年のこの時期の気候に接していると、「季節毎の管理」も、もちろん重要ですが、「日毎の管理」、更には「時間毎の管理」が重要であると痛感させられます。

「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2013年05月号掲載

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