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PRRSの撲滅を目指す若手の活動

日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博

例年と比較すると全国的に気温の低い冬となっており、豚舎の温度管理に苦労されている農場の方も多いかと思います。豚舎を閉じ切って、カーテン式のオープン豚舎ではビニールで目張りをするなど、すきま風対策には余念が無いと思いますが、逆に分娩舎の暖めすぎ、離乳舎の換気量不足で、哺乳豚の下痢や離乳前後のスス病の発生なども多発しやすい季節です。暖めながら換気するのは、光熱費のロスという見方もありますが、分娩舎、離乳舎については、保温と換気の両立という考え方を取る必要があります。

さて話題は変わりますが、先日PRRSの清浄化を目指す若手獣医師の会であるP-JETが主催する「地域ぐるみPRRS撲滅活動情報交換会」の様子を覗かせていただきました。現在日本各地で、地域ぐるみでのPRRS撲滅活動が組織化され始めており、その状況について関わっている方々が状況を紹介しあいながら、今後の方向性を探るという会議でした。その中で参加者の皆さんが口をそろえておっしゃっていたのは、PRRSを清浄化することの意義についての啓蒙を、繰り返し繰り返し、何度も何度も根気良く行っていく事の重要性でした。私自身、これらの活動が動き出しつつある地域で、生産現場に顔を出す事もありますが、活動の中心部にいる方々と、少し距離を置いて見ている方、最初から清浄化には反対という方、正直反応は様々といわざるを得ない状況だと思います。しかしP-JETのメンバーや活動を進めている若手獣医師たちはいずれもPRRS清浄化の経済的メリットについてはすでに多くの実証例が報告されており、疑う余地は無いと確信しています。後はいかに、この事実を出来るだけ多くの人々に納得してもらえるかが成否の鍵になると思われます。

また、もうひとつの大きなファクターとして、PRRSウイルスの農場内での浸潤状況を確認するための検査技術の進歩、あるいは普及が挙げられています。より簡便な採材方法であるとか、そのサンプルを用いた検査方法などについても、現在様々な試行錯誤が行われています。

「無くせる病気は無くしていく」という動きこそが、飼料高、相場安の苦境で、国際競争に競り勝っていくための必須条件である事は間違いないと思います。P-JETの活動を啓蒙の面からも検査法の進歩の面からも支えていかなければならないと感じた1日でした。

「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2013年02月号掲載

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