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試験結果と現場を結ぶ役割

日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。さて今年はどんな年になるんでしょうか。昨年から引き続き、養豚を取り巻く環境は逆風が吹いているといわざるを得ません。しかし悲観していても何も変わらないので、一年の初めに希望を持って目標を立てたいと思います。私自身は、獣医師という立場から、やはり養豚場内の疾病のコントロール技術をもっともっと先に進めることが今年最大の目標です。そしてコントロールの先の清浄化を視野に入れた活動を進めて行きたいと思っています。

そのためにも重要なのは、農場内の疾病の状態を、正確に、鋭敏に、リアルタイムに捉える診断技術を、更に研ぎ澄ます事だと感じています。我々がシステムパックを始めてから今年で28年になりますが、スタート時点から考えると、検査項目のラインナップも徐々に入れ替わりつつあります。中でも遺伝子診断の技術はここ10年、特に進歩の著しい分野です。こんなにも簡単に野外の養豚場からのPRRSウイルス株の遺伝子配列の比較を行えるなんて、私が入社時には想像も出来ませんでした。遺伝子診断技術は今後も我々の大きな武器として進歩を続けるものと思われます。

しかし、試験室の中の診断技術がどんなに進歩しても、その結果と現場をどのように結びつけるか、については、どこまで行ってもアナログで、泥臭い、経験の積み重ねが必要です。その両方が組み合わされてはじめて、「使える診断技術」になるのだと思います。我々は臨床検査ラボを長年営んでおりますが、ラボに閉じこもることなく、常に現場での答え合わせを求めて養豚場にお邪魔させて頂いております。(むしろこれが私の最も楽しみにしている仕事です。)

養豚現場において、疾病による経済的ロスの圧縮は待ったなしの課題です。それにも関わらず、まだまだ分からない事が山積みの状態です。途方に暮れることなく、一歩ずつ現場に役立つ知見を見つけて行きたいものだと感じています。

「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2013年01月号掲載

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