「鰻割烹 伊豆榮 本店」江戸時代中期創業の老舗うなぎ割烹店、上野の変遷を見つめてきました

外観写真
「鰻割烹 伊豆榮」本店(池之端)正面玄関には昇降機もあり、バリアフリー対応も万全です。

 「鰻割烹 伊豆榮(いずえい)」は、徳川八代将軍吉宗公の頃から、上野不忍の池の地に本店を構える老舗中の老舗です。もともと柄巻師(つかまきし)だった初代から数えて9代目女将、土肥好美さんがのれんを守ります。明治以降は、森鴎外をはじめとする多くの文豪にも愛され、今日まで上野の街とともに歩んできました。
 江戸の町は川が多く流れ、川魚が良く捕れていたそうです。今では驚くかもしれませんが不忍の池でも鰻が取れ、上野・湯島界隈にはたくさんのうなぎ屋さんがありました。時代が変わり提供する鰻は国内のうなぎ生産者から仕入れるのが一般的となり、現在伊豆榮さんでは、愛知県一色の三河淡水魚株式会社より活鰻を仕入れているとのことです。

調理風景
味付けはお酒のみの白焼き。素材の良さと焼きの技術が求められます。

 鰻の仕込みを行う本店の調理場を見せて頂きました。伊豆榮本店は、1〜2階、4〜7階と客室があり、11時の開店から夜10時の閉店まで、一日にすると大変な数のお客様が訪れます。朝7時から鰻を仕込みますが、約100㎏を用意されるそうです。俗に「裂き三年、串八年、焼き一生」との言葉があるとおり、鰻の職人が熟練するまでに長い年月を要します。調理場では鰻を裂く職人さん(関東では背開き)、裂いた鰻に串を打つ職人さん、焼きの職人さんと分担して調理されていました。

炭火でウナギを焼く
炭で皮をパリッと焼き上げる蒲焼き。蒲焼きの味を左右するタレは、代々受け継がれたものでその絶妙な味加減が多くのファンの方を引き付けています。

伊豆榮さんの鰻は外は香ばしく、中はふっくらが特長です。また冷めても美味しく食べられるよう職人さんが工夫されていらっしゃいます。三河淡水魚(株)の鰻は、飼育する水が綺麗な事と、専用の配合飼料を与える事で特有のにおいもなく、美味しい鰻料理として提供できるとのこと。質のよい素材(鰻)・調理の技術(職人さん)・きめ細かい接客の三拍子が、歴史あるのれんに輝きを加えます。

土肥好美さん
女将の土肥好美さん

 女将の土肥さんがうな重のこだわりをお話しくださいました。タレに砂糖を一切使用していないため、うな重は蓋を開けると照りが飛ぶそうです。そのため、お客様にお出しするまでは絶対に蓋を開けません。うな重には向きがありますから、柄のある蓋は向きを考え、柄のない昔からのお重はスタッフが分かる様工夫し、お客様に正面から蓋を開けて頂けるようお出しするとのこと。細やかなこだわりが、鰻を心待ちにしているお客様を喜ばせるのだと感じました。

 実際に鰻を頂きましたが、身がふわふわとして柔らかく皮の香ばしさもあいまってその美味しさにしばし時を忘れてしまいました。そんな幸せな時間を江戸中期から提供している「伊豆榮」。そののれんを守り続けること、日本の食文化である鰻料理の技術を受け継いでいくこと、責任や大変さを感じることもあるそうです。鰻の蒲焼の調理法(さばく・串打ち・蒸す・たれをつけて焼く)を今日の姿にまで発展させた日本人の器用さ・繊細さに心から感嘆しているし、何より鰻そのものの美味しさ、その鰻を極上の料理に仕上げてきた職人さんや先祖代々の方々に感謝しているとおっしゃっていました。

 観光で訪日される海外からのお客様も昨今増えてきています。欧米の方も、お箸を使い皮も残さず食べていかれるのだそうです。日本の食文化である「鰻」料理、美味しいものは国籍を問わず受けいれられるのでしょう。
 上野公園地区には数多くの美術館・博物館があり、展覧会鑑賞にお越しになった方々の来店も多いそうです。上野の芸術文化に触れた後は、ぜひ「鰻割烹 伊豆榮」に足を運び鰻を味わっていただき幸せな時間を体験してみてください。

うな重
「うな重」蓋を開けると香りが広がります。
不忍御膳
「不忍御膳」和食の職人さんも数多くいらっしゃいます。うなぎ料理以外のメニューも豊富です。

information

「鰻割烹 伊豆榮」本店

住所
東京都台東区上野2-12-22
TEL
03-3831-0954
座席数
270席
営業時間
11:00〜22:00(L.O.21:30)
アクセス
  • JR上野駅 しのばず口徒歩5分
  • JR御徒町駅 北口徒歩5分
  • 東京メトロ銀座線 上野広小路駅
  • 浅草方面出口徒歩3分
  • 千代田線 湯島駅 徒歩5分
  • 京成線上野駅 徒歩3分
  • 都営大江戸線 上野御徒町駅 徒歩3分

※本店以外に、都内3店舗(不忍亭・梅川亭・永田町店)、佐渡島に1店舗ございます。

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